【現地本部長日記】「本当の”半減期”」

掲載日:2011.08.23

今朝の新聞によれば、今の福島市の空間線量は毎時1.08μシーベルト、二本松市は1.07、郡山市で0.98といったぐあいに、中通りは南へ行くほど下がる傾向は一貫しています。会津若松市は0.14、南会津町は0.07と全く問題にならないレベル。また浜通りの南相馬市は0.42、いわき市は0.18と、中通りの福島市などと比較して相当に低い値です。一方、線量の最も高い地域の一つである飯舘村は福島市の二倍以上の2.41となっています。時間軸で考えますと、私が福島市に駐在を始めた6月初め頃の線量が1.3ほどでしたから、福島市では三ヶ月弱で線量が二割近く下がった計算です。

一方、地域の除染活動はまず幼稚園、保育園、小・中学校からスタートしました。福島市内のこれらの施設26校の平均の線量は除染前で屋外が毎時2.52μシーベルト、屋内が0.39だったのですが、除染後には屋外が0.34、屋内が0.16と、それぞれ86.4%、58.9%も下がりました。「放射線は四方八方に約70~100メートル飛ぶ」(正確には、空気中では約72mで放射線の強さが半分になります。)と言われていますから、ある地点での線量を下げようとすれば約半径100メートルの円の中すべてを除染すると効果が上がります。学校はそれ自体がかなり広い面積ですので、学校だけの除染の取り組みで大きな成果を出すことができたのです。

学校を皮切りに今後、個別のお宅や田畑、山林など困難な除染の取り組みが始まるわけですが、屋根の上の除染は手間もかかり、危険もあります。自分の家だけ頑張っても隣近所がやらなければ特に建物の二階の数字は下がりません。また家の隣の山林のおかげで数字が下がりにくいお宅もありえます。さらに、除染した後に雨が降ったら、また近隣から放射性物質が集まってきて線量が高くなった、というような話もあります。しかし、学校の例が示すように、地域で面的に除染に取り組めば、確実に成果が上がることもはっきりしました。見えない敵は、全く手に負えない敵ではなさそうなのです。つまり、身の回りの放射能の本当の”半減期”は、まさに私たちの努力しだいで幾らでも短くできるのです。

ちなみに、仮に除染の取り組みを一切しなければ、身の回りの放射能の半減期は一体どのくらいなのでしょうか?まず放射性ヨウ素は、物理半減期が8日ですので、すでに地域には存在していません。問題はセシウムなのですが、セシウム134は半減期が約2年でセシウム137は約30年。専門家によれば、今回の事故での両者の放出量はほぼ1対1ということなので、セシウム全体と
しての最初に放射能の強さが半分になる期間”半減期”は約6年と計算されます。加えて雨風で下水や川に流れてしまう点(ウェザーリング効果)を考慮すると、私たちの暮らしの身の回りでのセシウム線量は、仮に何もしなくても(土地の特性にも依りますが)3年から4年で半分になると考えられます。そして、これを更に日本の技術力と日本人の真面目さとでどこまで縮められるかが勝負となってくるのです。

・初期にCs134が1000、Cs137が1000と仮定。ここでは計算を簡単とするため半減期をCs134は2年、Cs137を30年とすると、上図の通りとなる。
・初期はCs134の半減期が支配的で減衰するが、Cs134がほとんどなくなる10年(5半減期)を経過すると、Cs137の半減期に支配され減衰していく。
・すなわち、結果的にはCs137の半減期に支配される。

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