再エネの適地・原発の適地

掲載日:2023.02.20

 わが国のエネルギー政策を原発回帰に大きく転換しようとしている岸田内閣が、ことあるごとに日本には「再エネの適地が限られている」と言うことを強調していますが、これは全くもって認識不足と言う他ありません。一国の首相にこのような恥ずべき認識を植え付ける経産省の罪は重いです。主にソーラーの適地のことを言いたいのでしょうが、そもそも住宅の屋根上ソーラーは東京都がようやく新築住宅に義務化を始めたばかりで、まだ一般的ではありません。また、ソーラーのイメージを最悪にした山の斜面での乱開発による発電は、明らかに政策の誤りであり、自然の力を使った発電をするために自然を破壊するなど論外です。

 本来強力に推進すべきは、住宅や工場や事業所等の屋根上ソーラーに加えて、人の手が既に入っている農地の上で、米や野菜作りと共存することで農業従事者の収入にも大きなプラス効果のある営農型の発電(ソーラーシェアリング)です。また、高速道路脇や線路の脇には、膨大なパネルの置き場所がありますが、これも政府の動きは鈍いです。さらに、日本発のペロブスカイトが普及すれば、その軽さと安さによって、設置場所の可能性は建物の垂直面など無限と言って過言ではありません。

 政府の極めて後ろ向きな姿勢の結果、かつてソーラーで世界の先頭を走っていた日本だけが、今やソーラーに大きなブレーキが掛かる国になりました。ソーラーシェアリングもペロブスカイトも日本発でありながら、今や韓国や台湾などが先行する有様です。半導体から始まって電気自動車に至るまで、ことごとく先進国から大きく遅れをとってしまった日本が再エネでも今後さらに決定的な遅れをとる事が懸念されます。

 そして日本が世界の流れから取り残されるもう一つの大きな要因が、政府の原発回帰政策です。原発を進めようとすれば、(悪意は無くとも)必ず再エネの進展にはブレーキがかかります。加えて、米国の約100カ所の原発のうち、地震多発の西海岸には古い原発がわずか2基しか残っていない現実を考えれば、米国が科学的根拠に基づいて原発の適地を厳選しているのは明らかです。他方で、日本列島全域がまさに地震多発地域であることを考えれば、多くの国民が感じている通り、日本には原発の適地は無いと言わざるを得ません(加えて、今なお増え続けている高レベル放射性廃棄物、すなわち核のゴミの捨て場所の適地も厳しい状況です)。過去10年間、ことごとく産業政策が失敗し、強引に原発回帰が推進され、急激な人口減少と相まって、今後さらに著しい国力の低下が引き起こされる事を私はとても憂慮しています。なんとしても今の政治を変えなければなりません。

 

関連記事

記事はありません