【現地本部長日記】「造血幹細胞の事前採取」

掲載日:2011.07.06

東京電力福島第一の事故現場では、今でも数千人のオーダーで作業員が連日事故対策に追われています。私も毎朝毎夕、その現場、そして東電本社とを結んだテレビ会議に出席し、汚染水処理の状況や炉の温度やダストのモニターデータなどに関する報告を受けています。作業者の安全と健康に関わる報告も重要な項目の一つです。

その現場最前線でリスクのある任務に着いてきた方々を対象に、造血幹細胞の事前採取が一時期検討をされました。私が初めてそのことを知ったのは、知人が私に「せっかく万全の体制を整えていたのに、社員の安全を高めるこの施策が採用されなかったのはなぜだろう」と質問されたからです。また、私がこちら福島に赴任してからも、参議院東日本大震災復興特別委員会で舛添議員がこれに関する質問をしていました。政府は作業者の安全を高める努力をしなかった、と。

昨日、この事前採取の準備をしてくださっていた谷口医師と、ようやく直接お話をすることができました。結論的に言えば、先生のご提案・ご助言については、当事者東京電力も採用を検討したのですが、原子力安全委員会からの助言は「必要なし」。さらにチェルノブイリ後の医療に関わった専門家や日本学術振興会からも否定的見解が出たため、結果として菅総理も4月25日と6月17日の二度「現時点では必要ない」と答弁をしています。

一番のネックは、この治療方法がまだ原発事故との関連では世界でどこでも採用されていない技術だったということでした。JCO臨界事故の時にはこの技術はなかった。そして、希望者のみ、特に危険の高い作業の従事者のみ、という条件を付けても、採用に伴うリスクも色々と指摘され、結局、今回は関係者をして世界で初めての採用には至らなかったということです。ただし、日本学術会議が「不要かつ不適切」との見解を出したことに対しては、日本造血細胞移植学会は正式に反論の見解を表明しています。

URL: http://www.jshct.com/pdf/110523.pdf

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