【現地本部長日記】「警戒区域視察」

掲載日:2011.06.25

今日は本部長として警戒区域に立ち入り視察をしました。まず、南相馬市にある、一時立ち入り希望の住民が集まる馬事公苑に行き、そこで私もタイベックに着替えました。今日集まった住民はおよそ200名。説明者の説明の時には笑顔も見られ、思ったよりも和んだ雰囲気でしたが、タイベックを着るころから参加者の顔が緊張の面持ちになっていました。今日は比較的涼しい日でしたが、タイベックはやはり暑いです。これでも、だいぶ前にセパレーツ式のに切り替えたのですが、熱中症への対策として、線量も確認しながら、来週火曜日からはタイベックを着用しないことを原則とします。

そこで一つ陳情を受けました。ペット関連の対応をしておられたボランティアの獣医さんからです。一時立入りの方の中には、ペットを連れて帰りたい方がいるのですが、実際にそれが叶うケースはわずか1割程度。あとは、見つからないか、亡くなっているというのです。ペットロス症候群も心配されます。何とか、そうした悲しいケースを減らして欲しいと言う切実なお願いでした。早速、その対応策を考えたいと思います。

馬事公苑を出発し、警戒区域に入りました。突然、動くものの何も見当たらない風景。南相馬市の海岸部、津波で大きな被害の出た小高地区、続いてその南の浪江町の請戸地区を視察しました。これまでに私が見た、宮城や岩手の被災地区とほぼ同じ風景でした。地震での倒壊家屋。そして津波で壊滅的な地域。船が何隻も陸に上がっていました。それでも時間が経っているので、自衛隊のご尽力の結果でしょう、整えられた瓦礫の山が至る所にありました。そして、請戸地区には、一時立ち寄りをされた地域の元住民の方々が作ったと思われる慰霊の祭壇があり、そこで私も掌を合わせました。しかし、行方不明のままの方はまだまだ少なくないのであろうという印象を受けました。

海岸沿いに南に下り、東京電力福島第一原発の排気塔が見えるところまで来ました。そこから半径3キロの立入禁止区域づたいに西に回りました。浪江町を出て、双葉町、大熊町と元町役場の地を確認。また、双葉町にある双葉工業団地を外から視察。ここに位置する会社群は、一時立入りを希望しても、3キロ圏内という理由で一度も認められておりません。大変申し訳ないのですが。と、そのとき、突然、線量計がけたたましく鳴り出しました。今日一日でもっとも高い、27μシーベルト毎時という計器の表示。取り急ぎ、その場を離れることにしました。

この間、犬に出くわしたことが3回。見た目は普通の印象の複数匹の犬が、それでも腹を空かしているのでしょうか、私たちの乗っているバスに近寄ってきます。大熊町の常磐線の大野駅付近では、誰かが気の毒がってしたと思われる、ドッグフードが大きな袋ごと何箇所か町に置かれていました。馬事公苑で獣医さんから伺ったお話を思い出します。救える犬の命を何とかしなければ。また、双葉工業団地のそばには、牛が13頭、柵も無い場所で群れ成して草を食んでいました。この牛たちの対策も課題の一つです。

大熊町を離れ、田村市にある警戒区域の検問を通過。ここに詰めておいでの警察ははるばる埼玉県警の方々でした。ご苦労様。そこから、田村市内のスクリーニングポイント、古道体育館に到着。田村市の線量は福島市より低い地域と言われるだけあり、町は普通の印象で人も車も動いています。体育館の中には、一時立ち寄りを終えた大勢の方がスクリーニングを受けていました。東京電力のマーク入りの大勢のスタッフ、全国の電力会社からの応援のスタッフ、そして稲毛の放射線医学研究所や全国の各大学医学部などからのボランティアスタッフなど、大勢がこの大変な一時立ち寄りオペレーションを支えていました。実際の現場を見てみると、本当にこれが大変なことだとわかります。

高速道路が無料になって最初の週末だったため、帰路、インター出口で大渋滞に巻き込まれ、午後7時前に県庁にようやく到着。今日の警戒区域中への視察立入は、県庁からの往復で合計約8時間で被曝線量は8μシーベルト、つまり毎時1μシーベルト相当でした。福島市内での日常は、毎時0.13μシーベルトですから、その約8倍です。改めて警戒区域の意味を実感したところです。今日の視察により得た貴重な現場の情報を、これからの現地本部の活動に役立ててまいります。

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